プログラマの証明

母さん、僕のあの休み、どうしたでせうね?
ええ、夏、実装から納品へゆく工程で、
多忙で流れたあの夏休みですよ。


母さん、あれは楽しみな休みでしたよ、
僕はあのときずいぶんくやしかった、
だけど、いきなり納期がせまってきたもんだから。


母さん、あのとき、向こうから若い技術者が来ましたっけね、
紺のスーツにネクタイをした。
そして手伝はうとして、ずいぶん骨折ってくれましたっけね。
けれど、とうとう駄目だった、
なにしろ深い不具合で、それに実装範囲が
背たけぐらい伸びていたんですもの。


母さん、ほんとにあの休みどうなったでせう?
そのとき友達に誘われていた夏祭りの花火は
もうとうに終わちゃったでせうね、そして、
秋には、灰色のバグがあのコードに現れ、
少しの休みの変わりに毎晩ぎりぎりの睡眠で働いたかも知れませんよ。


母さん、そして、きっと今頃は、今夜あたりは、
あの案件に、静かに仕様変更がつもっているでせう、
昔、つやつや光った、あのUMLの設計と、
そのコードに僕が書いた$Id$ というキィワードを
埋めるように、静かに、寂しく。