エピジェネティクスブーム

夏も終わったことだし、ほんとは今日から「フィジカルの問題」の解答例を出していこうかと思ったのですが、個人的なエピジェネティクスブームが巻き起こっていることもあって、あしたから。
ほら、夏休み明け最初の日は、校長先生のお話で終わるじゃないですか。


で、エピジェネティクスについてわかったこと。
まずエピジェネティクスの意味ですけど、エピはエピローグとかのエピで、「後」を表します。ジェネティクスは「遺伝学」なので、「後遺伝学」ということになります。
じゃあなんの「後」なのかというと、発生した「後」ということです。つまり、卵細胞が受精して細胞分裂が始まったときにも、新しい細胞に遺伝子がうけつがれていくので、そのときの遺伝の話ということです。要するに、ひとりひとり、一匹一匹の中で完結する遺伝のことで、子孫への遺伝とは別の話です。このエピジェネティクスな情報は子孫への遺伝では基本的にすべてリセットされてしまうというのが、dekodekoさんの指摘です(よね?)


ところがところが、エピジェネティクスな情報も子孫へ遺伝されうるという論文があるようなんです。
Epigenetic inheritance at the agouti locus in the mouse | Nature Genetics
この論文の中で、黄色からこげ茶にグラデーションしてるネズミの写真があるのですが、これは突然変異で黄色くなる遺伝子をもった親から生まれたネズミたちです。この中で黄色いものがその遺伝子が発現したもので、こげ茶のものがエピジェネティクスな過程で黄色い遺伝子が抑制されたものです。
エピジェネティクスな情報が子孫に遺伝しないとすると、これらのネズミの子供は同じような確率で黄色くなったりならなかったりするはずなのですが、黄色くなったネズミからは黄色いネズミが生まれる可能性が高くなり、こげ茶のネズミからはこげ茶のネズミが生まれる可能性が高くなったということで、このことからエピジェネティクスな情報がリセットされずに遺伝したといえるのではないかということらしいです。
また、この遺伝は食事などの環境で左右されることから「獲得形質の遺伝」が動物でも起こりうるという話のようです。


ただし、このエピジェネティクスの過程は、発生してから産まれるまでにおこることで、ここでの「獲得形質」も、その間に獲得した形質です。だから、キリンが高い場所の葉っぱをずっと食べてたから首がのびてそれが遺伝したという獲得形質の遺伝とは別の話です。
ピアノをたくさん練習したら、遺伝的にピアノのうまい子供がうまれるっていうことではないわけです。
確かにエピジェネティクスによって「獲得形質の遺伝」が起こっているといわれるとびみょーですね。
間違ってたりあいまいだったりより良い情報があったらまた指摘してください(^^


とりあえず参考文献

エピジェネティクス入門―三毛猫の模様はどう決まるのか (岩波科学ライブラリー)

エピジェネティクス入門―三毛猫の模様はどう決まるのか (岩波科学ライブラリー)

今年の4月に出た新しい本で、エピジェネティクスについてのいろいろな議論が落ち着いたあとで書かれた感じもあって読みやすかったです。ただし、三毛猫の話は最初の方に4ページくらい書かれてるだけです。