SIerは日本にしかいないのか

ちょっと気になったので。
まず、SIerってのは、システム受託開発専門のソフトウェア会社や部門ということでいいんですよね?
で、アメリカにはそういったSIerはいないのか、と。
ちょっと古いのだけど、手元に「ソフトウェア開発の定量化手法 第2版」という1998年刊行の本があるので、調べてみました。


187ページに「分野ごとのソフトウェア要員の概数(1995年)」という表があって、ここに「アウトソーシング」という項目には175,950人という数字があります。全体が2,432,168人なので、割合としては少ないですが、それなりに多い人数です。
この「アウトソーシング」は、「受託開発/アウトソーシング」として説明されていて、日本でいう受託開発のことを指すと思います。


ところで、このサイトの「図表2」を見ると、日本の情報サービス産業の従業員数は、1995年には40万人程度だったことがわかります。
「IT産業の動向 | IT Job Gate」
http://itjobgate.jisa.or.jp/trend/index.html
また、「図表4」を見ると、受注ソフトウェアの売上高は半分以下であることもわかります。この図が何年のものかはわかりませんが、とりあえずこれが1995年にもあてはまるとして、また、従業員数は売上高に比例するとすれば、受注ソフトウェアでの従業員数は20万人程度だったと思われます。これは従業員数なので、実際のソフトウェア技術者はもっと少ないはずです。


つまり、日本とアメリカでは、1995年には同じ程度のソフトウェア技術者が受託開発にかかわっていたのではないかということができます。


さらに、実はアウトソーシングとは別に書いてある軍需産業ソフトウェアの項目でも、「米国には防衛を専門とする受託開発企業が約1,500ある」という記述があり、ここでもそれなりに受託開発が行われていることがわかります。
軍需産業システム開発とは違うという話もありますが「後方支援アプリケーション、給与計算アプリケーション、利益管理アプリケーションのような実質的には民間分野のソフトウェアと同等のもの」も含まれているということです。


そして、「ソフトウェアのアウトソーシング業界は急速に発展している。」「現在、米国における全情報システムソフトウェアの約10%が受託開発またはアウトソーシング契約で開発されており、件数は急速に増加している」という記述が191ページにあり、米国でも受託開発は伸びていたようです。
これは、この「ソフトウェア開発の定量化手法」の初版ではアウトソーシングという分類がなく2版になって追加されたということからも伸び具合がわかります。


また、211ページには「受託作業の生産性が約16FP/人月であるのに対して、銀行自らが開発した同程度のプロジェクトの生産性は、平均約8FP/人月であった」とあるように、受託開発のほうが生産性が2倍であった事例があげられています。
(FPはファンクションポイントでソフトウェアの規模をあらわす)
平均でも、受託開発のほうが25%以上生産性が高いとしていて、受託には必然性があることがわかります。


これらから、アメリカでも必然性から受託開発は伸びていて、SIerは存在すると考えることができると思います。代表的な企業としてはAndersenなどがあげられていて、このあたりが大規模開発の元請企業ということになるんじゃないでしょうか。


「ソフトウェア開発の定量化手法」は新しい版が2010年に出ていて、2008年あたりまでの数字を元に記述されているようなので、興味ある人は確認してみるといいと思います。

ソフトウェア開発の定量化手法 第3版 ?生産性と品質の向上をめざして?

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