「どのように考えるか」ってのを書いた本は「なんたらシンキング」とか「脳科学でどうたら」みたいな名前で結構たくさん売られてるんだけど、「どのように考え間違えるか」って本はなかなかない。
その点で、この「考えることの科学」って本は、おもしろい。
- 作者: 市川伸一
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1997/02/01
- メディア: 新書
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人がどうやって考え間違えるかを、論理的側面、確率的側面、心理的側面から説明していて、そもそも考えるということのやり方は、大別するとその3つになるのだなっていうことがわかる時点でも、結構収穫。
論理的側面の話では、抽象的な論理問題を、具体的事例にあてはめると正解率があがるという話がおもしろい。
「カードの表が母音なら、裏には偶数が書いてある」というルールが正しいかどうか確認するために[A][K][4][7]の4枚のカードのうちどのカードを確認すればいいかという問題。AK47とか殺伐しすぎや、というツッコミは最初に実験したウェイソンという人に対して行うべき、というのは置いておいて。
この問題の正答率はかなり低いらしいのだけど、「封がしてある郵便には50円切手を貼るべき」や「5万円以上の伝票には裏にサインが必要」とすると、途端に正答率があがるらしい。
そういえば小学校のときの知り合いが、ふつうの計算問題は解けないんだけど、数字に「円」をつけるとわかると言ってたのもこれと同じか。
もちろん、論理形式のうちどのような推論が誤りかというような話もされてある。
ちょっと怖いなと思ったのは、先の問題で「女の子は赤い帽子をかぶってください」としてイラストを提示するというのを小学生低学年にやらせたら「この顔はあやしい」とか「まじめそう」とかいう話になってそもそも論理問題としてなりたたなかったという話。そういえば「大人」の議論でもこういう話をよくみかける。論理問題の一番考慮しないといけない問題は、それをちゃんと論理問題として扱ってもらえるかどうかじゃないだろうか。
統計的側面の話としては、モンティホール問題のような、間違えやすい確率問題はなぜ間違えやすいかという話がもちろん載ってる。モンモンティホール問題自体は扱ってないけど。
他の本と違うのは、「これ間違いやすいでしょう、確率を計算するとこうなるんです、不思議ですね」で終わるところを、どうやればこの問題を納得しやすい形で考えれるかということまで踏み込んでるところ。
心理的側面の話は、推論がいかに知識や環境に左右されるかという話。
あと、この本は、どのように考え間違いを補正するかという本でもあって、ある意味では教育の方針を考える上でも参考になる。学習の動機付けの話が少しとりあげられてる。
考え間違いは人間の仕組み的に必ず起こるので、考え間違いをなくすという話はされていない。
どのように考えをより確かなものにしていくか、興味がある人にはぜひ読んで欲しい本だと思う。