フクロウとアキレスの違い

ふくろうは巣にたどりつけるのかな?
アキレスは亀に追いつけるのかな?
ゼノンのパラドックスとして有名なお話です。
アキレスと亀の話だけが取り上げられるので、1/2+1/4+1/8+…が1に収束するということだけを示して、亀が1m進んだところで追いつくからパラドックスではないという説明がされていたりするのですが、そうするとフクロウとの違いが説明できないのですね。


無限から目をそらせば、アキレスは亀に1m/分の速さで近づくので1分後に追いつき、フクロウは巣に近づくにしたがってどんどんどんどん遅くなるのでいつまでも巣にたどり着けないことがわかる。
じゃあ、なぜどちらも半分ずつ近づいているのにフクロウは巣にたどりつけなくて、アキレスは亀に追いつけるのだろう?
フクロウは無限のカラスが巣に収まるのを見届けない限り巣にたどり着けないので、いつまでたっても目的地にたどりつけない。
一方、アキレスが亀に追いつくために、無限の時間は必要ない。それでは、アキレスと亀の競争で無限に繰り返されているものはなんなのか。


アキレスの例では、アキレスが無限にすこしずつ進んだのではなくて、アキレスが移動した軌跡を無限に分割していただけなのです。だから、終わらないのはアキレスと亀の競争ではなくて、アキレスと亀の競争に対する説明です。
説明が終わらないだけであって、競争は終わるのです。
3点とられたのは10分の間のできごとなのに、3点とられたことの解説が10分では終わらないことと同じです。10分で3点取られた理由の解説は、いつまでもどんどん続けることができます。
説明が無限に続けられるからといって、その試合が終わらないことにできるなら、どのテレビ局もいつまでも得点シーンの解説を続けることでしょう。